受講者の役に立つ研修を企画する
企業研修の企画段階で、実際に研修を1から作成する場合は、以下のプロセスで進めます。
- [1]『目的』と『目標』の設定
- [2]『What/Why』で全体をデザイン
- [3]『4MATシステム』で研修の流れにひと工夫
- 新入社員研修オリエンテーション
- 人事部長からのメッセージ
- 会社を知る
①当社の歴史について
②当社の主力製品紹介… - 研修開始にあたっての不安を解消
- 研修へのモチベーションを高める
- 会社を知る
①当社の歴史を理解してもらう
②主力商品を理解してもらう… - Ⅰ. 経験学習
- Ⅱ. 概念形成
- Ⅲ. 練習と習得
- Ⅳ. 計画と実践
[1]『目的』と『目標』の設定
まず、研修の目的を設定します。「○○のために○○を習得する」といった例が一般的です。「研修のねらい」という項目名で研修案内などに掲載されるものになります。
次に、その研修の達成目標を設定します。達成目標は、その研修を通して何ができるようになるのかを表現したものです。「○○について説明できる」「○○を操作できる」「○○を使って5分で製品紹介ができる」というように、「…ができる」という表現にします。
[2]『What/Why』で全体をデザイン
続いて、研修内容の作りこみです。良質な研修デザインのために、What/Whyでの作りこみをおすすめします。
オープニングから終了まで、何を行うか(What)を考えていきます。それをまとめたものが、研修の日程表になります。
ここではもう1つ、その内容をなぜ行うのか(Why)についても考えてください。「○○を理解してもらう」「○○に気づいてもらう」のように、研修内容一つ一つのWhyを考えます。Whyがはっきりしない内容は、変えるか削除することになります。
【What/Whyの例】
What | Why |
---|---|
|
|
なお、既存の研修を見直す場合は、Whatはすでにはっきりしているので、各内容のWhyを考えながら、必要に応じて内容(What)を変更します。
[3]『4MATシステム』で研修の流れにひと工夫
What/Whyで一通り研修内容を構築した後、さらにもう1歩踏み込んだデザインを行います。その目的は、“気づき”をもたらす研修の流れを作ることです。“気づき”(なるほど、そうか)は学習内容への理解を深める要素であり、喜びでもあります。“気づき”の少ない研修は、受講者にとっては内容がつまらないと感じるものになってしまいます。
“気づき”をもたらす研修は、インストラクショナルデザイン理論の一種である4MATシステム(※)を活用して作ることができます。
※ 4MATシステム:バーニス・マッカーシー(Bernice McCarthy)による理論
4MATシステムによる研修全体の流れ
4MATシステムが特徴的なのは、「Ⅱ. 概念形成」、いわゆる講義の時間の前に、「Ⅰ. 経験学習」として受講者が何かを経験する時間を持とうとする点です。講義の前に経験学習を経ることで、講義内容の学習に動機づけられたり、理解が促進されるとしています。
例えば「ビジネスマナー研修」の場合に、ただ講義を受けて正しいビジネスマナーを知識として受け取るより、講義の前に、受講者がビジネスマナーについて考える話し合いや、名刺交換のロールプレイのように何かを経験する機会を持った方が、ビジネスマナーを学ぶ重要性をより理解しやすくなる、という具合です。
異なるテーマの講義が連続する研修の場合には、いくつかの重要なテーマごとに、そのテーマに関する話し合いやグループ作業などを組み込んでみると良いでしょう。
→「研修コースデザイン」をもっと詳しく