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「質問できない新人」をつくらない 
ヘルプシーキング(援助要請)システムの構築

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新任メンバーを育てる組織のしくみ

新年度の始まりに、新入社員に若手社員が「若いなあ」と感想を述べ、若手社員はその上司から「君もまだ若い」と言われる。あちこちの職場で聞こえてきそうな定番のやりとりです。

おそらく、それを言う上司自身も、若手だった頃に、同じようなことを当時の上司から言われていたでしょう。立場を変えながら繰り返される光景です。そう考えると、職場で起きるすれ違いも、少し違って見えてきます。

「質問できない新人」と「自分で考えろと言う上司」

新入社員や、中途採用、異動などで職場に新しい顔ぶれが加わると、次のような場面が繰り返されることがあります。

新任のメンバーには「これやっておいて」とタスクが用意されています。場合によっては進め方のレクチャーを挟みますが、言われたとおりタスクに取り組み、夕方になってふと、「どこまでできていれば正解だったのだろう」と新任メンバーは不安を覚えます。

「質問できない新人」と「自分で考えろと言う上司」というすれ違いは、さまざまな場面で起きますが、どちらにも言い分と事情があるでしょう。

新任メンバーには、聞きたいことがたくさんあるはずですが、分からないことばかりで、何から聞けば良いかも分からない。さらに「こんな初歩的なことを聞いたら評価が下がるかもしれない」「忙しそうで声をかけづらい」と遠慮し、萎縮してしまう。

一方で、上司も横暴な対応をしているわけではなく、「自分で考えて動ける社員になってほしい」「すべての業務を手取り足取り教えていたら業務が回らない」など、新任メンバーのことを考えつつ、やむにやまれぬ状況があります。

とはいえ、結果としては、ミスの発覚が遅れたり、新任メンバーが業務や不安を抱え込み、仕事の手応えが薄れたりしていきます。いわゆる「静かな離職」の入り口は、意外とこうしたすれ違いから発生する、小さな断線にあります。

学習と成果を加速させる「ヘルプシーキング」

「何をどう聞けばいいのか分からないし、今聞くのは迷惑かもしれない」と、「いつでも聞いてほしいけど、ちゃんと自分でも考えてほしい」の間の断線は、個人の性格や資質に由来するのではなく、どのような職場でも、また、どんな人にも起きやすい構造だと言えます。すなわち、個人に原因を求めても改善は難しく、組織として対応するスキルと環境を持つ必要があります。

この断線の解消に役立つのが、「ヘルプシーキング(援助要請)」という考え方です。人が困難に直面したとき、問題を解決するために周囲に援助や支援を求める行動を、ヘルプシーキングと呼びます。ヘルプシーキングは、学習と成果を加速させる、ビジネスに不可欠なスキルです。

ヘルプシーキングのスキルを高めるには、質問と回答の形式を定め、ルールやしくみとして組織に定着させるのが効果的です。

  1. 質問の形式を定める
  2. 回答時間を設計する
  3. 回答を定型化する

1. 質問の形式を定める

新任メンバーに、決まった形式で質問できるテンプレートを渡します。おすすめは以下の4点です。

質問形式の例

  1. 前提
  2. 試したこと
  3. 詰まっていること
  4. 希望すること

次の例をこのまま参考にするように伝えるといいでしょう。

項目 実際の例
1. 前提 この資料は、A社向けで、目的は○○です。
2. 試したこと 過去資料を参照しながら、提出案を作りました。
3. 詰まっていること 数値の根拠として、どの資料を参照すべきか迷っています。
4. 希望すること 10分程度でいいので、方向性を確認したいです。

こうした形式があることで、例えば「A社の提案、どうしたらいいですか?」といった漠然とした質問を受けた上司が、時間をかけて具体的な「答え」を出すのではなく、「判断」だけを返せばよくなります。さらに、「前提だけもう1つ追加してください」「試したことを2つ書いてください」のように、4つのうちどの項目が足りないかを返すように定めておくと、やりとりを重ねることで、質問の質が揃っていきます。

また、質問の場面を想定し、その際に使うべき言い換えも新任メンバーに渡しましょう。例えば、質問が「答えをもらえますか?」ではなく「仮説はこうです。合っていますか?」に置き換わっていれば、回答者である上司の負担が下がります。

2. 回答時間を設計する

「いつでも相談して」「遠慮せず聞いて」と伝えていても、解決にはつながりません。「この入り口から入れば迷惑にならない」という質問ルートを用意することが重要です。入口を事前に設計し、オリエンテーションで共有します。

設計するルールの例

  • 毎日11:00〜11:15は質問時間
  • 急ぎはチャットで困り度1〜3を添える

3. 回答を定型化する

質問と同様に、回答も定型化することで、回答者の負荷が下がり、また「今は無理」という実質の回答拒否となってしまう状況を防ぎます。次のようにチームで定型化します。

定型化する回答の例

  1. 「○時なら時間が取れます」
  2. 「まずここを確認して、次にここまでやってみてください」
  3. 「判断軸はこうです。迷ったらこの基準で選んでください」

回答する側は、都度の説明が不要になり、質問する側は次に何をするかが明確になります。さらに、口頭でその場かぎりのやりとりにするのではなく、社内チャットなどに集約して記録しましょう。同じ質問が繰り返されても、「また聞かれた」ではなく「資産が増えた」に変わり、後にやってくる新任メンバーの立ち上がりが加速します。

チームの文化として定着させる

大事なことは、「自分で考えろ」を曖昧な精神論で終わらせないことです。多くの場合、求められているのは次のいずれかです。

  1. 目的や前提を自分なりに整理する
  2. Yes/Noではなく、選択肢をいくつか出す
  3. 想定されるリスクを洗い出す
  4. いつまでに何を決めるかを意識して動く

状況や経験値によって、上司が「今回は2までやって報告」「次は3も添える」と求める段階を指定すれば、新任メンバーはどこまでを自分でやればよいかが分かります。さらに、早めに相談できたことを肯定し、「型に沿って相談できたのは良い」と評価の軸を示すと、ヘルプシーキングは個人スキルではなく、チームの文化として定着していきます。

「主体性を発揮してほしい」「コミュニケーション能力を上げてほしい」と言うのは一言ですが、実際は簡単なことではありません。だからこそ、新任メンバーを迎える組織のメンバーは、かつての自分を思い出してみてほしいと思います。

「新人の頃は、全部自分で調べて先輩に迷惑をかけないようにしていた」と感じるなら、その時の自分が、どれだけ大変だったかも思い出してみてください。「当時は、先輩に質問してよいか分からなかった」と感じるなら、きっと今の新任メンバーも、同じところで迷っています。

その迷いを、個人の勇気に任せるのではなく、スキルと環境で減らすことに、ヘルプシーキングを扱う意味があります。質問できる新任メンバーは、学び上手であり、質問を受け止められる上司は、成果が出る環境を設計できる人です。新任メンバーが増える混乱期を、ヘルプシーキングのためのシステムを整えて、迎えましょう。

田島 隼耶

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