新入社員を3年で辞めさせない配属と教育 第5回
企業を取り巻く環境の変化が加速度を増している現在、新入社員には早く一人前に育ってもらいたいと、誰もが期待します。企業によっては、3年で一人前にするという目標を立てているところもありますが、大学生の学力レベルが低下している現状では、無理でしょう。少なくとも3年間は、一人前をめざすより、社内義務教育期間と認識して、じっくりと育てることが大切です。
そこで、上司と新入社員が協同で、部門としての育成目標を独自に構築する必要があります。目標には、次の5つの要素が含まれていることが必要です。
- S[Specific]:具体的で測定できるもの
- M[Meaningful]:新入社員にとって意義を感じるもの
- A[Agreed to]:合意し、納得してチャレンジできるもの
- R[Realistic]:現実的で達成可能なもの
- T[Time related]:いつまでにと期限をつけ、スケジュール化できるもの
このSMARTの5要素に沿って、1年、2年、3年と、年度ごとに目標を設定します。
年度の終了時点で、関係者を集めて発表会を行うなどすれば、より動機づけられると思われます。ある企業では年度末に、1年間の活動の成果を、社長を含めた幹部へプレゼンテーションをします。プレゼンを聞くことによって、上司がどれだけ育成に関わっていたかが明確に分かり、上司も含めた学習効果は非常に高いものがあります。
上記のようにして、目標が決まれば、それをフォローするのが上司の役割です。新入社員の行動をよく観察し、気づいた点をフィードバックします。このときに注意すべき点は、思いつきでやらないことです。目標を合意しているのですから、目標達成への方向づけを念頭において行動観察し、フィードバックを行います。
思いつきを避けるためには、上司が新入社員観察シート(ノート)を用意し、記録をとることをおすすめします。複数の新入社員が配属されたら、複数のノートを用意し、気づいた点を記録しておくことです。ただし、記録した結果を、まとめてフィードバックすることは考えず、気づいたら、すぐにフィードバックすることが基本です。フィードバックした内容が修正されているのか、その後の行動変化を確認する意味で、ノートに記録するのです。
また、新入社員には、最初は週間ごとにレポートを提出させ、絶えず進捗状況を把握しておくことが大事です。状況に応じて月間に切り替えてもよいと思いますが、1年間は週間レポートが望ましいです。週間レポートを読むと、上司の期待どおりに成長していないケースが多いでしょう。
上司の期待どおりに成長できないときは、何らかの理由があるはずです。したがって、上司としては、まず新入社員の状況を整理し、情報を集めることが必要です。それを基に、何か本人以外の外的障害があるかを確認し、障害があるならば、それを取り除くサポートをしなくてはなりません。
そこで次回は、目標達成の障害の1つ、ストレスについて見ていきます。
- 部下の生産性と充実感を高めるマネジメントスキル向上
- SMARTに沿った目標設定と合意の方法、フィードバックの伝え方などを学べます。