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キャリアビジョンを実現するための
上司の役割

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新入社員を3年で辞めさせない配属と教育 第4回

新入社員のキャリア実現をしくみでサポート

新入社員が、自分のキャリアビジョンを明確にして自己研鑽に励むためには、社内のキャリアパスを明示する必要があります。社会人になるまで、ほとんど自分の判断基準を持たずに過ごしてきた新入社員に対して、何の材料も提供せずに、「自分の将来は自分で考えろ」というのは、コンパスもなく荒野を歩かせるのに等しいように思います。

また、キャリアビジョンを実現するためには、会社都合だけではなく、自分が選択できる人事異動も、しくみとして準備しておくことが大切です。往々にして、組織の長は優秀な人材を離そうとしません。本人が新しい仕事にチャレンジしたくても、異動が認められなければ動けません。それをサポートするのが社内公募制であり、FA制度です。

社内チャレンジの具体例

ある企業では、プロジェクトを立ち上げる際のメンバー募集の対象は、その職場で1年以上働いている社員全員です。応募は上司経由ではなく、該当するプロジェクトリーダーに直接、書類を提出し、面接を受けるといったやり方です。プロジェクトチームへの採用が決まれば、上司は異動を承認せざるを得ません。人事は、社外の人を採用するのと同じように応募の秘密を守り、ただ面接に立ち会う役割です。

別の企業では、自部門の人材が不足したときは、社内公募が原則であり、応募者は自分のランクより1つ上のランクまで応募できます。応募用紙の本紙は上司経由で応募先へ、写しは直接人事に送るシステムです。上司が応募を止めても、人事が応募の事実を把握しているので、あまり長く上司が止めておくと、人事から上司へ警告がいくことになっています。

新入社員への上司の責任

こうしたしくみをどのように効果的に運用するかは、組織を構成する人の要素に関わっています。一般的に、新入社員は、自分の能力がどの程度かまったく分かっていません。仕事がどの程度できるかも自覚していません。配属されてから、先輩の行動を観察したり、一部の仕事を体験することによって、仕事ができないことを自覚します。自覚した新入社員は、仕事を通して学習しますが、その際、自分の仕事ぶりを上司がどのように見ているかが気になるものです。

入社して最初に配属された先の上司は、新入社員にとって、親に相当するほど影響が大きい存在です。新入社員時代に上司から言われたことを、ずっと記憶に留めている方も多いでしょう。

親が子どもを育てるにあたって、幼児のときには、スキンシップとして頻繁に接触しますし、声をかけます。また、物心がついたら、しつけを行い、社会の一員として恥ずかしくないように育てます。これと同じように、上司は新入社員の行動をよく観察し、何か気づいた点があれば、すぐ声をかけるなど、一定のコミュニケーションの量を確保する必要があります。

子どもを育てるには最初の3年間が重要と言われるように、企業人を育てるのも、入社して3年が重要な鍵を握ります。最近、ブラザー制度などで、教育係を任命する企業もありますが、子どもの教育に親が全責任を持つのと同様、上司が責任を持ち、ブラザーに任命する先輩社員は、上司の指示に基づいて教育をする係であることを忘れてはなりません。

次回は、3年という時間軸の中での、具体的な対応策について考えてみたいと思います。

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