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新入社員のストレス行動 - 闘争と逃避

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新入社員を3年で辞めさせない配属と教育 第6回

SMARTの5要素(第5回参照)で設定した目標を、達成していくプロセスで、新入社員はさまざまな障害に直面します。その障害の中で、本人自身の問題として考えられるものは、目標の理解が不十分、意欲の欠如、能力不足(知識とスキル)、仕事のやり方の理解不足などです。これらの原因を想定しながら、必要に応じて目標を確認し、改善策を話し合い、指導することになります。

行動観察を怠り、フィードバックがなかったら、新入社員はどうするでしょうか。勝手に自分自身でフィードバックをして、まちがった方向へ進むか、あるいは、自分は期待されていない、無視されていると思い、疎外感を感じてストレスを抱え込むことになります。その結果、退職へと進むケースも多いのです。したがって、ストレスへの対応は、退職回避にとって非常に重要です。

ストレス曲線ストレス曲線

この図は、緊張(ストレス)と生産性の関係を示したものです。緊張が低いときは、生産性も低いのですが、緊張が増すにつれて、生産性も向上します。したがって、適度な緊張は、生産性に良い影響を及ぼします。締め切りが迫ると懸命に働いたり、学生が試験前になるとよく勉強したりするのは、この例です。

しかし、緊張には耐えられる限度があり、この限度を超えると、反対に、これまで上がってきた生産性が下がり始めます。この耐えられる限度を、ストレスポイントと呼びます。つまり、ストレスはすべて悪いものというわけではなく、ストレスポイントを超えるストレスが、悪と定義されます。

新入社員が悩んだり迷ったりしているときが、ストレスポイントを超えてしまった状況と言えますが、その際の、おもな兆候は次のようなものです。

  • 落ち着きがなくなる
  • 視線をそらす
  • 口数が減る
  • 元気がない
  • 離席が増える
  • 皆と行動を共にしなくなる
  • イライラしている
  • ミスが目立つ
  • 乱雑、投げやりな仕事
  • 自分から声をかけない、挨拶しない など

これらの兆候は、大きく闘争型と逃避型に分けることができます。最初の兆候がどちらの型に現れるかは、人によって違いますが、ストレスの進行具合によって、2つの型を行ったり来たりすると言われています。

闘争型の兆候は、たまったストレスを、上司や周囲に向かってはき出す兆候です。声が大きくなったり、荒々しい言動を示したり、皮肉を言ったりなど、「抵抗」という態度が一般的です。上司に文句を言ってくることが多いので、新入社員がストレスを抱えていることに気づきやすいでしょう。

一方、逃避型は、押し黙って考え込んだり、上司を避けたり、あいまいな態度をとったりなど、ストレスをため込むような兆候ですので、普段からよく行動を観察していないと、気づかないことがあります。それを見過ごしてしまうと、次のストレス行動である闘争型に移ってしまい、辞表をたたきつけることにもなりかねません。

それでは次回(最終回)は、こうしたストレス行動への対処方法を整理し、本連載のまとめをしていこうと思います。

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