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新入社員は、なぜ入社3年で辞めるのか?

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新入社員を3年で辞めさせない配属と教育 第1回

はじめに - 新入社員の現状を考える

大卒の新入社員の30%以上、高卒の新入社員にいたっては50%以上が、3年以内に退職すると言われています。採用と教育に多くの時間と費用をかけたにもかかわらず、そのコストも回収できないうちに退職されてしまうのは、企業にとって大きな損失です。

大学生の学力レベルの低下が叫ばれてしばらく経ちますが、現在の大卒者は、昔の高卒者と同じレベルだと考えている人事担当者も多いようです。もし、学力レベルと退職率に因果関係があるとするならば、近い将来、大卒者の3年以内の退職率が50%以上になることも、視野に入れておく必要がありそうです。

現在は、多くの家庭がサラリーマン世帯となり、子が親の働く姿を直接見る機会は、ほとんどありません。親の仕事を肌感覚で理解することは難しいでしょう。その代わり、親のサラリーマン経験に基づく価値観が、子どもに影響を与えます。

一般的には、大企業ほど待遇が良く、労働時間、月額の給与、賞与、福利厚生など、さまざまな面で中小企業を上回っています。その結果、子どもを「良い大学に入学させ、良い会社に勤めさせたい」という価値観を抱く親が多くなるのは当然ともいえます。ここで言う「良い大学」とは、「良い会社」への就職率が高い大学を指し、「良い会社」とは、皆が知っているような大企業を意味します。

多くの学生は、自分の価値観を確立する前に、こういった価値基準に基づいて進路選択をしていると推測できます。企業の採用の前倒し傾向も、それを後押ししているでしょう。学生の人気企業ランキングでは、客観的には衰退産業に属している企業が上位に位置していたり、毎年の順位にほとんど変化がなかったりする状態が、これを裏づけているといえます。

マスコミに多く取り上げられ、なんとなく垢抜けていてかっこいいイメージがある企業がランクインしていることも、見逃せないポイントです。すなわち、その会社で何かをしたくて入社するのではなく、あくまでも会社に入ること(「就職」ではなく「就社」)が目的であり、仕事に対する動機(モチベーション)はあまりないとみるのが妥当でしょう。

仕事への動機がない新入社員

実際に、新入社員の営業研修の場で、「本当に営業をやりたくて入社した人は、どのくらいいるか?」という質問をすると、「一見かっこよさそうな企画部門が本来の希望であったが、採用されやすいので営業職を希望した」といった声が多く挙がります。

もちろん、中には明確な仕事への動機を持っている新入社員もいますが、それは少数派です。仕事に対する動機が弱い、どうやらこれが3年で退職をする大きな原因と考えられます。

そこで次回は、動機のない新入社員に、どのようにして具体的な目的を持たせるかを考えてみたいと思います。

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