適切な教育研修に必要な意識
実務は忙しく、その中でも適切に部下を育成し、エンゲージを高めながら優秀な人材を確保するキーパーソンであり続ける――現在のマネジャー層に求められるものは大きく、そして、何もしなければ時間と人材を浪費していくばかりです。
前回は、マネジャー層に関わる課題と教育の必要性についてお伝えしました。今回は、実際に教育研修を実施する際に、意識するポイントを3つ紹介します。
- 教育研修へのマイナス意識を取り除く
- 学ぶ項目を分けて考える
- 研修内容のバランスを考える
1. 教育研修へのマイナス意識を取り除く
教育研修担当者は、対象層がより良く働けることを目指して、研修を企画します。しかし、実施してみると、受講者の温度感が低い状態で研修が進んでいったり、ネガティブな反応があったりはしないでしょうか。
そこには、変化の「起こし手」と「受け手」のギャップがあるかもしれません。良くなってほしいといった思いが強ければ強いほど、受講者にネガティブな感情を生んでしまう可能性があります。
変化の起こし手と受け手に発生するギャップの例
変化の起こし手 (組織・研修を企画する側) |
変化の受け手 (メンバー・研修の受講者) |
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よりマネジメントしやすくなるよう、研修を実施しよう | 研修を受ける時間で、仕事を片づけたいくらいだ |
対人力を伸ばすために、コミュニケーションスキルを身に付けてもらおう | 何でもかんでも、こちらが相手に合わせていかないといけないのか |
スキルアップをして成果を出しやすくするために、幅広く学んでもらおう | 忙しいのに、やることをさらに増やすのか… |
研修の実施には、変化の受け手である受講者とのギャップを認識することが重要です。受講の前に、受講者の抱える疑問や不安を取り除くことで、受講するためのマインドセットができます。期待を一方的に押しつけるのではなく、相手の状況や困難さ、心境を理解していると伝えることは、とても重要なことです。
2. 学ぶ項目を分けて考える
対人対応力やプロジェクトマネジメント、戦略立案力やコーチングなど、マネジメントに必要とされるスキルは多岐に渡ります。しかし、業務やマネジメントに役立つスキルを身に付けてほしいと思う気持ちが先行しすぎるあまり、実施する研修の内容を詰め込みすぎたり、スキル学習に偏重してしまっていないでしょうか。
「分けるから分かる」という言葉があります。アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱した「カッツモデル」では、組織の管理者を3つの階層に分け、それぞれの階層に必要なスキルを3つに分類しています。
カッツモデル 3つのスキル
テクニカルスキル (業務遂行能力) |
特定の専門分野、業務遂行に関わる知識や能力 |
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ヒューマンスキル (対人関係能力) |
コミュニケーション、プレゼンテーションスキル、協調性など人間関係を築き、保つ能力 |
コンセプチュアルスキル (概念化能力) |
思考力、洞察力、分析力など戦略的な判断に求められる能力 |
カッツモデルでは、それぞれの階層に求められるスキルの割合が異なります。階層が高くなるほど、実務に関わるテクニカルスキルから、先を見通す力や判断力などに関わるコンセプチュアルスキルの割合が大きくなっていくモデルです。こういったモデルを参考にしながら、学習してほしい要素を絞ります。
3. 研修内容のバランスを考える
実際の研修内容を考える際には、以下の3つ要素をバランスよく実施する必要があります。
研修に必要な3つの要素
意識 | 現状を正しく認識し、他者からの期待や、目標とのギャップなどへの気づきを与え、意識変革を促すもの |
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知識 | マネジメントを遂行するうえで役立つ理論やフレームワークなど、全体的かつ長期的に活用できるもの |
スキル | 具体的な場面や状況など、特定の事象へ対処する方法の学習。意識的に行うことで、職場に戻ってすぐに活用できるもの |
「意識」ばかりだと物足りなさが感じられ、「知識」だけでは頭でっかちになり、実践に移すことが難しくなります。「考えただけ」になる場合は、これです。「スキル」のみでは、そのスキルを活用する必要性や理由に対する納得感が薄く、職場での実践が見込めません。
3つの要素をバランス良く実施することで、気づきを促し、ギャップを解決していく方法を考え、考えたことを職場で実践に移す方法を理解できる研修になります。このバランスを踏まえながら、4MAT理論など研修設計の具体的な方法に移ることで、より効果的で、受講者目線で考えられた研修となります。
ラーニング・マスターズでは、教育研修プログラムの提供はもちろん、こういった研修体系全体の整備や、課題発見のための診断ツールなど、より効果的な学習につなげるコンサルティングを行っています。
また、人材開発の課題解決に向けた情報提供の機会として、2024年度も引き続き、無料セミナーを開催していきます。マネジャー研修を企画する際のより具体的なヒントや進め方を紹介するセミナーも予定しています。
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