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個人や組織が「行動しない」要因と
リーダーシップ

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行動変容を促す「意図的な影響力」

実際の現場で求められるリーダーシップ

リーダーシップとは、圧倒的なカリスマ性を持つ人物だけが発揮できる特別な力でしょうか。または、状況によって自然と立ち現れる性質のようなものでしょうか。

例えば、職場に新たな営業管理制度を導入したとします。リーダーは、行動目標と成果目標を明確にし、週次で進捗を確認し、達成度を可視化します。制度そのものは理にかなっており、説明を十分にしたにも関わらず、いざスタートしてみると、データ入力は滞り、ミーティングではメンバーの言い訳が先行します。リーダーが叱咤激励を繰り返しても、現場の空気はどんどん重くなっていきます。

どれだけ優れた戦略や制度を導入しても、現場の行動が変わらなければ、成果にはつながらない。これはおそらく、マネジメントに携わる方なら誰でも一度は直面する課題です。

無意識に影響を与えるカリスマ性や存在感といった性質は、リーダーシップの一面ですが、具体的な課題を抱えた実際の現場でより強く求められるのは、リーダーシップの別の一面、意図的に働きかけ、周囲の行動に影響を与える力──「意図的な影響力」です。

「変わらない」「行動しない」に必要なこと

「意図的な影響力」としてのリーダーシップを発揮しようとしたとき、最初に壁となるのが、前述のように「変わらない」「行動しない」という現象です。

こうした状況で、リーダーはまず「変わらない」「行動しない」原因や理由を考え、それを解消すべく奮闘するでしょう。その際に、多くの人は、例えば、メンバーにやる気がないことが原因だと判断すると、「モチベーションを上げるためにはどうしたらいいか?」だけを考え、対処をします。しかし、「変わらない」「行動しない」現象の背景には、実はさまざまな要因が絡み合っています。

影響力の6つの要素

「クルーシャル・インフルエンス」影響力の6つの要素「クルーシャル・インフルエンス」影響力の6つの要素
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人が行動しない(または、望まれていない行動を“してしまう”)のは、モチベーションやスキルの有無など、個人が持つ要素だけが理由ではありません。周囲の人の反応や職場文化、制度設計や物理的環境のような複数の要素が影響し合い、最終的に「行動しない」(または「してしまう」)という結果になっています。

あるメンバーにはやる気があっても、率先して取り組もうとしたときに、他のメンバーから白々しい目で見られる職場では、実践を控えるかもしれません。実は、新しい制度はリーダーが思っているより複雑で、メンバーは変更後のやり方を理解できないまま、忙しさから新たな施策の実行にまで手が回っていないかもしれません。

以下は、「行動しない」原因を6つの要素の視点で分けて考えた例です。

1 個人・モチベーション
新しい制度が導入された理由が分からず、急に面倒な制度に変わったと感じている
2 個人・能力
新しい制度の運用手順がよく分からない
3 社会・モチベーション
周囲のメンバーが積極的に取り組んでいないため、自分もやらなくていいと感じている
4 社会・能力
分からないことを相談できるメンバーがいない
5 構造・モチベーション
新しい制度を活用しても評価や称賛が得られない、面倒が増えるだけだと感じる
6 構造・能力
新しい制度用のシステムに不具合があり、よくフリーズする

個人と組織の行動変容を促すためには、複数の要因のどれか1つだけに対処するのではなく、6つの要素の視点で検討された複数の対処が求められます。リーダーは、メンバー個人に働きかけるだけではなく、組織や環境にも目を向け、「望ましい行動」が選択されるしくみを準備する必要があります。

7月に実施する無料セミナーでは、この「影響力の6つの要素」に基づいて、現場の行動に「意図的な影響力」を発揮するための実践的な視点と、アプローチの手法を紹介します。現場の行動変容がうまくいかないとお悩みの方、新たな制度を現場でしっかり機能させたいという方は、ぜひご参加ください。

田島 隼耶

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