人材育成の「答え」を目指す「数式」とは
研修の企画と実施に追われる教育研修担当者
人材開発や教育研修をおもな業務としている皆さんは、年間を通して、常に研修の企画と実施に追われることと思います。今の時期で言えば、4月からの新入社員対応は落ち着いてきたかもしれませんが、すぐに階層別研修がスタートし、新入社員フォロー研修も動き出さなければならない…といったところでしょうか。
これは、教育研修担当者の皆さんに限らず、私も同様です。当社、ラーニング・マスターズでは、私たち研修講師が営業を兼任しているため、研修の企画と実施の両方に対応しながら日々が過ぎていきます。
答えではなく、まずは「数式」を作る
研修を企画する際に、私が大事にしていることは、「数式を作る(立式)」という感覚です。
子どもの宿題の答え合わせをするときに、よく「なぜ、この答えになると考えたのか? 公式は? 途中式は?」といったことを問いかけます。実際、こう問いかけると、子どもには面倒な顔をされます。算数や数学の問題なら「答えが合っていればいい」と言いたくなるかもしれません。
しかし、企業の教育研修では、「答え」としての研修を、何の背景もなくただ提供すればいいというものではありません。その「答え」に至ったのはなぜか? なぜ、その「答え」が「答え」であると言えるのか? これらを証明するには、その過程の数式をしっかり作ることが重要になります。
数式から「答え」を導き出す
どういった研修を実施するか、何を目的にするかなどを考える際に、何をどう考えているのか。その思考を言語化すると、以下のような形で立式して解き進めています。
- 経営陣の期待 – 現状の成果 = 埋めるべきギャップ
- 埋めるべきギャップ = 量×質
- 質 =(スキル+知識)× マインド
さらに式は続く…
実際は、各要素について情報収集をしながら組み立て、最終的な答えまでたどり着こうとしています。
- 埋めるべき要素を探す、調べる
- 立式して解いていく
- 答えにたどりつく
- 解決策となる教育施策を提案する
このように答えを探していく中で、研修ではなく、「教育と組み合わせるべきもの」にたどり着くこともあります。例えば、「人事制度」と教育、「採用」と教育、「販売戦略」と教育などです。この点は、つい見落としがちです。答えは「研修」だと、決めつけた思考にならないよう気をつけます。
最終的な理想は、こういった経験をもとに、人材育成や人材開発の「公式」と呼べる方程式を見つけることでしょうか。現実は、苦労して考えても、研修を行う段階ではまた状況が変わっている場合も多々あるので、その点も注意が必要です。
研修当日は、受講者に対する観察力や柔軟な対応力なども試されます。教育研修担当者は、どれだけ経験を積んでも、とにかく「考え続ける」必要があります。そこが大変でありつつも、やりがいでもあります。
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