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一人ひとりが自ら考えて動く組織を目指す

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変化に対応するための企業理念

転機に向き合う問いかけ

「あなたは何をするために生きていますか?」突然こんな質問を受けたとしたら、すぐに答えられるでしょうか。日常的なテーマではないので、しばらく考えこんでしまうかもしれません。そんなことを考える暇があったら、手元の仕事を1つでも進めないと、などと言って明確な答えがないままにしてしまうでしょうか。

しかし、人生の転機には、こういった本質的な問いに正面から向き合い、手元の仕事ではなく少し顔を上げた高い視野で、自分が今後どうするのかを考える必要が出てきます。

企業においても、大きな変化に対応すべき転機には、「この会社は何をするために存在しているか?」という問いが必要になりますが、多くの企業にはすでにシンプルで明確な答えがあります。それが企業の存在意義、つまり企業理念です。

指針となる「企業理念」で変化に対応

企業理念も、日常であれば意識しなくても仕事は進んでいきます。順調に成長を続ける企業の研修で、受講者から「企業理念という理想を語っても飯は食えない」といった声が挙がったこともあります。しかし、それはビジネス環境が落ち着いて平穏な状況に限ります。

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりビジネス環境が激変し、なお変化が継続中です。さまざまな変化の対応と決断、そして行動が必要な状況が、経営層だけではなく全社員に降りかかっています。社員それぞれが、視野を高く保つことが求められています。

想定外の事態は、行動マニュアルで規定しきれません。緊急事態への準備も大切ですが、起こる事態のすべてを想定することは難しく、いざというときには、社員一人ひとりが自ら考えて動かなくてはいけません。企業理念は、その指針となる焦点を与えます。

例えば、企業が対応を迫られた大きな変化と言えば、2011年の東日本大震災です。東京ディズニーリゾートでは、自分たちも「被災者」であるキャスト(従業員)が、帰宅困難者であるゲスト(来場者)に対して、柔軟な現場対応をしたことが知られています。キャスト一人ひとりが、それぞれの立場で視野を高く行動できたからこそ、突発的な想定外の事態でも、今も賞賛されるような対応となったのではないでしょうか。

企業理念の認識と理解を見つめ直す

変化の多い現代です。COVID-19に関連する事態が落ち着いたとしても、またすぐに次の変化が起こるでしょう。さまざまな問題や身近な変化に遭遇した今だからこそ、危機感を持って、企業理念を見つめ直すべき機会です。

そのポイントは、企業として、社員として、両方の立場から「企業理念を本当に社員に伝えられているか」「企業理念を本当に理解しているか」という点にあります。どれだけ理念を示したところで、社員に伝わらなければ意味がありません。理念浸透のための施策が重要です。理念が一人ひとりに浸透している組織は、変化対応に強くなれます。

外回りができない、研修の登壇がなくなったなど、当コラムの読者には、時間に余裕がある方もいらっしゃるかもしれません。いい機会だと考えて、企業として、また社員として、企業理念を見つめ直してみてください。

林 健太郎

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