平行思考で変化対応と生産性の向上
環境の変化で変わる会議
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、テレワークやWeb会議への切り替えが増えているようです。使用するツールの使い方が分からない、使いこなすのが難しいといった問題もありますが、会議の質の高さも重要です。
進行役として、議題の設定、進行順や会議時間などの「会議のいろは」を押さえていても、さまざまな見方や意見が出てくるのが会議の常です。予定どおりに進まない、会議に時間がかかる、言いたいことのタイミングを逃すといった問題が起こりますし、Web会議では、よりコミュニケーションの難しさを感じる場面が増えることも考えられます。
こういった事態を避けるために、会議でも活用できる思考法をご紹介します。
6色ハットで思考を整理
「シックス・シンキング・ハット」という思考法では、人の思考の観点を6種類に分類します。分かりやすくするために、分類を6色の帽子(ハット)で表します。
6色ハット
- □ホワイト:客観的なデータや情報、事実を考える
- ■レッド:主観や感情、直感でどうかを考える
- ■イエロー:メリットや価値、良い側面を考える
- ■ブラック:リスクや弱み、懸念点を考える
- ■グリーン:アイデアや可能性、解決策を考える
- ■ブルー:(会議の場合)議題、進行管理、結論
この6種類の思考は、私たちが何かを考える際の観点をおおむね網羅しています。どの観点も必要ですが、これがそのまま6人の会議参加者だとしたら、発言が噛み合わず、収拾がつかない状況が想像できると思います。
実際の会議で使う場合には、分類した6種類の思考の観点を1つずつ考える形で進めていきます。場面ごとに、参加者全員が同じ色の帽子をかぶるイメージです。参加者の思考を“交通整理”することで、会議をスムーズに進められます。進行役の具体的な発言は、例えば以下のようになります。
会議の進行役が6色ハットを使う発言例
会議の開始 | |
---|---|
■ ブルー | 「●●について、いろいろ意見があると思います。どんな観点から意見が欲しいかを説明しながら進めますので、できるだけそれに沿っての意見をお願いします」 |
□ホワイト | 「事実を基に現状の共有をしましょう」 「関係する他の部署の人達はどのように言っていましたか」 |
途中 | |
■ イエロー | 「現状でうまくいっている点は何でしょうか」 「うまく進めるためには、何に着眼すると良いでしょうか」 |
■ ブラック | 「うまくいっていない点は何でしょうか」 「このまま進めるうえで、どういった障害が考えられますか」 |
■ グリーン | 「改善策のアイデアを自由に挙げてください」 「実行できるかは気にせず、解決案を言ってください」 |
会議の終了 | |
■ レッド | 「これらのアイデアについて、率直にどう思いますか?」 「思ったことを言ってください。理由は問いません」 |
■ ブルー | 「ここまでの話をまとめます」 「次回までに必要なデータを各自用意してください」 |
どの色をどの場面で使うのかは会議次第ですが、それぞれの観点を交差させず「平行」に進めることで、会議の混乱を避け、質と効率を高めます。この思考法を「平行思考(パラレルシンキング)」とも言います。
これは「シックス・シンキング・ハット」の研修でも話す実際の例ですが、BSE問題により売上が85%ダウンした会社では、平行思考で進めた60分の会議で、30個のコストカット策と、35個の販売強化策を考えることができたそうです。会議が始まる時点で、参加者全員が同じ議題に焦点が合っていることは言うまでもない大前提ですが、平行思考で会議の進行やあり方を高めることで、生産性の向上を目指せます。