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情報の意味を決めつけないために

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「思い込まない」情報の扱い方 第1回

主張が対立する理由とは

先日、「男女の脳の違い」について書かれた本を読みました。その本の筆者は、「男女は生来的に異なる脳を持っているので、いろいろな違いがあって当然である」と主張していました。一方で、世の中には「男女の脳に違いはない」という立場も存在します。「男女の脳が違うという主張の、根拠になっている実験は、妥当性に欠ける。男女に違いがあるとすれば、それは環境要因によるところが大きい」という主張です。

答えが1つであるはずの自然科学にも関わらず、これらの主張は対立しています。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

主な理由は、次の2つが考えられます。1つは、情報そのものが恣意的なものである場合です。英エコノミスト誌によれば、科学分野の論文における実証研究のうち、3分の1は再現性がないそうです。そしてもう1つが、私たちが情報の意味を決めつけてしまう場合です。

知らないことを知ろうとするときに

私たちは、世の中のすべてのことを知っているわけではありません。むしろ、知らないことの方が多いでしょう。そして厄介なのが、「分からない」「知らない」という状態は、私たちにとって、心地よいものではないということです。

心理学者のロバート・ヤーキーズとJ.D.ドットソンは、「人に対する警戒心や不信感は、相手に対する未知から生まれる」と述べています。経験上、うなずける方も多いかもしれません。

私たちは、居心地の悪い状態から脱しようとして、「知ろう」という努力をします。そして、その思いが強すぎるとき、信憑性の低い情報でも「正しい情報だ」と判断をしたり、「これは○○という意味だ!」と誤った解釈をすることが発生します。

「人は見たいものしか見ない」という言葉があるとおり、世の中には多くの思い込みや決めつけが存在します。そうした思い込みや決めつけの裏には、居心地の悪さから逃れたいという私たちの弱さがあるかもしれません。

新しい情報に触れるときには、情報の真偽はもちろん重要ですが、前提として「自分はその情報をどのように扱おうとしているのか」を自覚することが大切なのでしょう。私も「思い込まない」「決めつけない」を意識して、活動していきたいと思います。

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