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シニア層の再活躍は内的動機づけから

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経験を活かすために

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新年を迎えるにあたって、旧年を振り返ってみると、2015年は著名なスポーツ選手の復帰(カムバック)という話題が目立ったように思います。例えば、フィギュアスケートでは浅田真央選手。野球では、以前のコラムでも1度取り上げた広島東洋カープの黒田博樹投手、また、2016年シーズンから古巣へ戻ると会見で発表した、阪神タイガースの藤川球児投手。サッカーでは、元日本代表のストライカー中山雅史選手が、JFL(日本フットボールリーグ)のアスルクラロ沼津での現役復帰を宣言しました。

その中で印象的だったのは、復帰を決めた選手の皆さんが、さっぱりと吹っ切れたような表情と力強いまなざしだったことです。私見ですが、これは、目的や目標を自らが主体的に設定して、そこを目指したいという強い思いに起因していると思いました。復帰に際しては、肯定的な意見ばかりではなく、否定的な意見も聞かれることがあります。そういった否定的な意見をはねのけてでも、例えば、「もう1度頂点をとりたい」「個人成績よりも、自分の出身チームをとにかく優勝させたい」「もう1度ゴールネットを揺らしたい」という思いを持ち続けられるから復帰をするのだと思います。この復帰への強い思いは、人材開発の分野では「内的動機づけ」と言った方が、聞き慣れているかもしれません。

この「内的動機づけ」を生むための大事な要素が、これまでの「経験」と「内省」です。競技に復帰した選手たちは、1度競技を離れて客観的に過去の経験を見直し、整理したことで、現役復帰を決断するだけの強い内的動機づけを得るに至ったのではないでしょうか。

この「内的動機づけ」の話は、シニア層の再活躍と関連が深いと考えています。収入の高さや、地位的な向上から距離を置く立場になったときに、「なぜ仕事をするのか」「仕事をすることで何をしたいのか」といった問いがあらためて突きつけられるからです。

このように、シニアの活躍については、「内的動機づけ」につながるような「経験」と「内省」の扱い方が重要になると思われます。ここまでのキャリアを振り返り、その意味や意義を再発見する機会が、求められているのではないでしょうか。今のシニア世代はちょうど高度経済成長からバブル景気、そしてその後の失われた20年と、酸いも甘いも経験してきた世代です。その経験という財産を活かしてもらうためにも、再度シニア層の施策で、その「経験」と「内省」にスポットを当てることを検討してみてはいかがでしょうか。

 

林 健太郎

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