組織のエンゲージメントを高める要素を見直す
電撃復帰の理由は?
いよいよ、来週は野球好きにとっては待ちに待った球春到来、プロ野球の開幕です。今年こそは私の応援している横浜ベイスターズが浮上してくれるのではと、密かに期待をしています。今回はヤンキースの黒田投手が、広島東洋カープ(以下、カープ)に今期復帰したことについて、人材開発や人材育成の視点で考察してみたいと思います。
今回の黒田投手の選択は、ある種の「常識をはずれた」選択でした。報道によれば推定19億円を超える年俸をもらい、結果も残していたため、ニューヨークヤンキースへの残留か、それともメジャーの他球団に移籍かと考えていた野球ファンは多かったでしょう。しかし多くの予想に反して、黒田投手は、古巣であるカープからの4億円のオファーを受けて、日本球界への復帰を電撃的に決めました。
この決断に、黒田投手自身の義理や人情など個人的な部分に注目が集まっていますが、私は、メジャーリーグへと渡った優秀な人材を、単に金額競争ではない要因で取り戻したカープとそのファンに、もっと注目すべきではないかと考えています。
単純に金額だけを見れば、約15億円の減額です。黒田投手にとって、カープが単なる日本の一プロ野球チームではなく、それ以上の特別な存在であることは、間違いないと思います。それは育ててもらったという恩義かもしれませんし、「ファンの熱気を感じる。広島に帰ってきたなという感じです」というコメントにあるように、ファンからの熱い声援だったかもしれません。
さて、ここからが本題です。これを一般企業に置き換えてみるとどうでしょうか。
エンゲージメントを高める3つの要素
社員と会社が強い関係性で結ばれて、会社に対して愛着をしっかり持つことを、「エンゲージメント」と表現することがあります。エンゲージメントを、社員と会社の間で結べているというのは、社員にとって自社が「特別な会社」という思いを強くもっている状態と言えばよいでしょう。黒田投手とまではいかなくても、社員にエンゲージメントを感じてもらうのは、グローバル化していく状況で、優秀な人材を確保し、維持していくために重要な要素です。
私見ですが、エンゲージメントを高めるうえでキーになるのは、以下の3つの要素ではないかと考えています。
- 組織の理念・ビジョン
- メンバー
- 労働環境(評価含む)
1. 組織の理念・ビジョン
われわれはなぜ仕事をしているのか? そして将来どこを目指すのか? これを示すことです。カープは、日本で唯一の、親会社を持たない市民球団としてスタートしています。地域に根づいて、熱心なファンも多い球団です。
2. メンバー
良きメンバーと仕事をすることです。黒田投手の場合は、チームメート、そしてなによりも熱心なファンの存在は大きいでしょう。
3. 労働環境(評価含む)
労働環境が適切であり、適切な評価があることです。黒田投手は、金額面ではかなりの減額ですが、慣れた日本の環境で野球に集中できることも、大きな要因だと思われます。
この3つの要素に作用すれば、パフォーマンス向上に寄与する教育研修によって、企業エンゲージメントを高めることができるのではないでしょうか。優秀な人材を採用するだけではなく、定着させること、また、黒田投手のように戻ってくるような組織づくりこそが、持続可能な成長には必要です。
黒田投手の復帰は、「自社は今、社員とどの程度の『エンゲージメント』を結べているだろうか」と見直すきっかけにもなるニュースだったのではないでしょうか。ぜひ、一度考えてみてください。