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問題解決の質に大きく影響を与える
「状況の把握」

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問題解決の質を高める思考のコツ 第3回

人の思考は認識に影響を受ける

問題解決の質を高めるために、問題や課題を解決する際の「考える」という行為について、第1回では「なぜ」から考えることをお伝えしました。今回は「なぜ」の前提になる「状況の把握」です。

「思考の誤りの多くは、論理の誤りというよりも、認識の不十分さである。」

これは、ラテラルシンキングの生みの親であり、創造的思考の世界的権威でもあるエドワード・デボノ博士の言葉です。何を考えるか、どのように考えるかも重要ですが、その前にまず状況をどのように認識しているかが思考の質に大きく影響を与えることを意味しています。

第1回で挙げた新入社員研修担当者の例だと、「来年度の企画や実施をどのようにしたらいいか、よく考えて対応するように」と言った上司は、前年実施した研修に何か問題があると認識しているかもしれませんし、業界の変化や競合会社との比較で、新たな視点が必要だと認識しているかもしれません。

状況の認識が不十分なまま、担当者が自分の認識だけで改善策を考えた場合、結果的に、その上司の意図とは違う方向に進んでいる可能性があります。

認識と把握に重要な複数の観点

問題解決のためには、目の前の状況について、さまざまな観点から捉えてみます。何らかの解決すべき問題があるという状況を捉えるだけで十分な場合もありますが、それだけではなく、例えばプラス面とマイナス面、そして興味深い点など、いろいろな角度から具体的に問いかけてみます。

やってみると、実際に考えていたプラス面やマイナス面だけではなく、新入社員研修に関する素朴な疑問点や、今後深掘りをすべきテーマなどが見えてくることがあります。これは、新入社員研修に対する認識が変わることを意味します。研修の見直しにつながる明確な「答え」ではありませんが、このあと研修を見直す思考をするうえで重要な視点になります。現状の問題点の解決や改善案だけでなく、新たな研修内容に発展することもあります。

観点のセット

  • プラス面は何か?
  • マイナス面は何か?
  • 興味深い点は何か?

この3つの観点は、ものごとを見るときの「観点のセット」です。第2回でお伝えした、思考の癖から逃れるための「思考ツール」の1つです。思考の癖から逃れるためにも、状況の把握にも役に立ちます。このような観点のセットを複数持つことで、状況の把握の質が、さらに高まります。

テスト解答の間違いの90%は、テスト問題の認識の間違いとも言われます。状況やものごとをどのように捉えるか、「状況の把握」は思考において非常に重要です。より良い状況の把握を身に付けた人が、より強力な思考者になるでしょう。

近藤 克明

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