問題解決の質を高める思考のコツ 第1回
「よく考える」とはどのような行動か
問題が起きたときや新しい課題への対応など、「よく考える」べき機会は多くあります。しかし、「よく考える」とはどのような行動かを理解し、実践できている人は多くないかもしれません。
例えば、新入社員研修の担当をすることになり、「来年度の企画や実施をどのようにしたらいいか、よく考えて対応するように」と上司から言われたとします。そういった状況で多くの人は、まず前任者から引き継ぎを受け、前任者が過去に実施した研修の課題を聞きます。そして、どのように実施したらいいかアドバイスをもらいながら、改善点を考え、企画を計画に落とし込み、研修を実施する――といったことが行われると思います。
この流れの中でも、もちろん「考え」ています。しかし、これは「どうやって実施するか」という、実施の方法や手順に偏った思考をしています。
「何を考えるか」と「どのように考えるか」
問題や課題を解決する際の「考える」という行為は、〈何を考えるか〉と〈どのように考えるか〉に分けることができます。「よく考える」には〈何を考えるか〉が重要で、そのためには、まず「なぜ」を考えることが大きな手がかりになります。
先に挙げた例で言えば、「なぜ新入社員研修を実施するのか」を考えてみます。そうすると、その目的に照らして、カリキュラム変更などのアイデアが出てくるはずです。研修で実施するそれぞれのイベントについても、同じように「なぜ」から考えます。なぜ企業のトップによる講話を実施するのか? その目的に照らし合わせると、講話形式がベストなのか? など、考えることが多く出るはずです。
目的が「トップの考えや、方針を理解する」であれば、別の方法もあるでしょう。例えば、あらかじめ文書や映像でトップの話を伝え、新入社員からは質問やコメントを受け付けます。研修では、それに回答する形でトップから話をすることで、方針への理解が深まります。
このように、目的を達成する方法は複数あります。しかし、たいていの場合、私たちは「なぜそれを実施するのか」にはあまり目を向けません。特に、前例がある場合には、すでに枠組みがあるので、その中で考えるのが楽であると(無意識にでも)判断し、思考の前提となります。そのまま「どうやって実施するか」だけを考えて、ある程度満足してしまうわけです。
〈何を考えるか〉と〈どのように考えるか〉は問題解決の方法論などでもよく言及されますが、現実には、理論が分かっていても、そこまでじっくり考えていられないといった状況もあるでしょう。次回のコラムでは、前提となる「状況の把握」も含め、「よく考える」ためのヒントを具体的にお伝えします。
- 第1回 「よく考える」とは - 問題解決の質を高める思考のコツ
- 第2回 思考ツールを活用して問題解決の質を高める
- 第3回 問題解決の質に大きく影響を与える「状況の把握」