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生産財営業研修の歴史と現状

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体系的な営業研修の歴史

現在は、多くの生産財企業が営業研修を実施していますが、かつては、営業の成果をあげるには先輩の技を盗めと言われ、体系的に営業研修を行う風土は、日本の企業にはありませんでした。本格的な営業研修の歴史は、ここ30数年のことです。歴史を振り返りながら、営業研修の現状について考えてみます。

営業研修がなかった理由

日本で営業研修が行われていなかった理由には、以下のような思い込みがありました。

  • 営業は個人のセンスによるところが大きく、教育しても成果に結びつかない
  • 良い製品を作れば売れる
  • 商品の知識さえしっかり持っていれば売れる
  • 大手メーカーの場合、名前が浸透しているのでお客さまと信頼関係が作りやすく、親しくなれば売れる

また、次のような理由もありました。

  • 代理店に営業を任せていて、メーカーとして営業研修の必要性を感じない
  • 一方、代理店は企業規模が小さく、営業研修にまで手が回らない

営業研修の導入

このような状況の中で、いち早く営業研修に取り組んでいた業界は、当然のことながら、競争の激しい業界でした。その代表例が、当時のコンピューター業界です。

おもに、外資系コンピューターメーカーが取り組み始め、国内メーカーはその後を追う形となっていました。外資系の場合は、営業研修が必要であるという共通の認識があったため、新人から中堅、ベテランまで、営業の経験別にカリキュラムを整備することが、1970年代から始まっていました。しかし、国内メーカーが研修を体系化するには、経験別にカリキュラムを整備する必要性を、社内に認識させることから始めねばならず、1980年代後半にようやく整備されました。

その後、規制に守られていた業界や、談合することによって競争を排除してきた業界など、いわゆる“ぬるま湯”に浸かった業界でも、営業研修の必要性が認識されてきたのが、バブル崩壊前後です。

また、営業研修の進んでいる業界では、研修費用を経費として見なすのではなく、投資として考える傾向にあります。

このように、トラック競技にたとえると、業界によっては、1周も2周も遅れているといった差が生じているのが現状です。

営業研修の内容

一方、研修内容は、初期段階では、営業担当者個人のスキルアップを図ることが主眼でした。そのため、面談スキル中心でした。

面談スキルが、現在も営業の基礎として重要であることに変わりはありません。しかし、お客さまのニーズが変化し、多様化している昨今、お客さまの潜在的なニーズを把握し、的を射た提案をするには、目の前のお客さまだけではなく、お客さまの先のお客さまも視野に入れた営業活動をせざるを得ません。それには、情報の加工力、情報の読みとり力が必要です。

そのため、最近の営業研修の内容は、面談スキルだけではなく、マーケティング力をベースにし、

  • 的確なターゲット先の選定ができる
  • 合理的な活動管理ができる
  • 客先の変化と自社の変化を踏まえて、組織としての情報共有を図り、戦略を立案できる

といったことを、盛り込み、個人の能力アップばかりでなく、組織としての営業力アップを目指すものになっています。

研修の定着化

学んだことを定着させるには、ITの活用が不可欠ですが、実践できている企業は少ないかもしれません。その最大の原因は、管理者が営業活動全体を把握する能力にあります。ITの活用で得た情報の、どのポイントに的を絞って指導したらよいかが分からない管理者が多いのです。業界によって差はありますが、管理者が、担当時代に営業の基本的な研修を受講していない、つまり、営業の基礎をよく知らないのです。

営業の基礎を理解し、情報を読みとることができ、かつ、ITを駆使して的確な部下指導ができる。マーケティングオートメーションの導入も進む中、そのような管理者をどれだけ育成できるかが問われていると言えるでしょう。

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