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コーチングで示すべきは「問題解決策」ではない

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気をつけたい「コーチング」で陥りやすい罠 第2回

自分の考えで指示をする上司の思い込み

「職場の問題を認知したら、自分がすばやく解決しなければならない」といった思い込みを持つ上司は少なくありません。問題を発見したら、すぐに解決する能力は、もちろん重要です。現場のライン長でしたら、その考えは間違いとも言い切れません。しかし、それが人材育成コーチであった場合は、危険な徴候です。

このような話があります。業務について、誰に相談すれば良いのか分からない部下が、右往左往していました。上司としては、自分の部署の業務を滞らせたくないですし、ビジネススピードの低下は職場の問題です。上司は、自分の過去の経験から「こうすればうまくいく」と考える解決策を指示しました。部下は指示どおりに行動しますが、数日後にはまた、同じように右往左往しています。よく聞いてみると、その原因は、上司の指示に関係ないものだったのです。

この話には、3つのポイントがあります。まず1つめは、上司は自分の経験から原因を決めつけていたこと。2つめは、自分の成功体験が、いつも通用すると思い込んでいたこと。そして最後に、部下の話に耳を傾けず、目先のスピード重視で指示を出していたことです。

最も深刻なポイントは、3つめです。上司が部下の状況を見て、上司自身の考えだけで指示を出した瞬間、部下は自分で解決策を考える機会を奪われます。「解決策とは、上司が考えるもので、自分はただ指示に従えば良い」という思い込みを形成させてしまいます。

当事者ではなく指導する目線で

コーチングは、部下が自分で問題解決できるようになるための支援です。コーチは、問題を発見したときには、問題の「解決策」ではなく、「解決“支援”策」を示す必要があります。今回例に挙げた状況で言うと、上司は「どうすればこの問題を改善できるか」を部下と共に考える場を作ることが、それにあたります。

そうは言っても、「問題の発見→解決策の指示」という思考の流れが当たり前だった人が、自分の力だけで考え方を変えるのは困難です。自分にとって当たり前の行動は、自分では疑うことができないからです。メンバーの誰かに「解決策の指示」をしていた場合の指摘を依頼するなど、他者の視点を得られるようにしておくのも良いかもしれません。

最後に、臨床心理学者の平木典子さんの言葉を紹介します。「カウンセラーは面談者が自分で自分を助けることが出来るように助ける人」――この言葉は、多くのコーチにも参考になるはずです。

渡辺 誠一

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