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信頼関係がコーチへの「依存」となる前に

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気をつけたい「コーチング」で陥りやすい罠 第9回

以前このシリーズで、対象者と親しくなることで発生するリスクに触れました。 シリーズ最終回の今回は、信頼関係から起こる可能性がある大変危険なリスク「依存」についてご紹介します。

コーチングのリスク「依存」とその理由

コーチへの依存とは、「この世の中で、コーチほど私のことを分かってくれる人はいない。この人なしでは、私はやっていけない」と対象者が思い込んでしまう状態です。コーチがこの状態を意図的に作り出すことは、洗脳に当たるでしょう。ですが、これは意図しなくても起こる可能性があります。

熟練のコーチが傾聴のレベルを最大にすると、対象者からすれば、自分の考えや気持ちをありのままに理解し、受け入れ、心の深いところで対応してくれる人であると感じることになります。これまで出会ったこともないすばらしい人で、失いたくないと思えてきます。

対象者はコーチと過ごす時間が楽しみになり、トレーニングにも前向きになりますが、同時に、自分がコーチに対して示す好意的な感情に、コーチも積極的な気持ちを返してくれるといった思い込みも抱きます。ところが、コーチはコーチの役割で接するため、対象者は物足りなく感じてくるのです。

そうなると対象者は、思いどおりに対応してくれないコーチやコーチの言動に、嫌悪や攻撃的感情を持ち始めます。文句を言ったり、逆に黙り込んだり、コーチが嫌がることをわざとしたりと、直接的にも間接的にも抵抗を示すようになります。

対象者との関係を適切に保つために

依存を形成しないためには、どうしたらいいでしょうか。対象者が「○○コーチが言うならやります」などと言い出すのは、依存の徴候です。そういった徴候が少しでも現れたら、すぐに面談の中止やコーチの変更を考慮するなどの予防をしましょう。

対象者との信頼関係は重要ですが、プライベートと切り分けることも大切なポイントです。依存が形成されてしまうと、互いにダメージを受けますし、結果的に「コーチを受けない方が良かった」ということにもなりかねません。

対象者とコーチの両者が成長するのが、コーチングの精神です。熟練コーチほど依存が形成される危険性も高まるという認識を持ち、互いに対象者とコーチであるという関係性を示す必要があります。

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