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コーチに協力的な対象者は「トレーニング」をしていない

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気をつけたい「コーチング」で陥りやすい罠 第3回

トレーニングとは変化を促すこと

コーチは、トレーニングを通して、対象者が希望する行動の定着を目指します。そのためには、対象者の価値観に沿ったトレーニングの構想が必要です。でなければ一度は身についたように見える行動も、習慣として継続しないことが分かっているからです。その意味で、初回面接での対象者の価値観の探索は、非常に重要なものとなります。

特に、対象者がコーチの言動に肯定的な態度の場合が肝心です。対象者は、納得してくれたように見えて、実は頷いているだけといった状況が発生しがちです。その場合、価値観の探索が曖昧かつ困難になり、摺り合わせが不十分になってしまいます。逆に、スタート時点で受講に納得をしないなどの抵抗を示した対象者の場合は、お互いの立場や思いをしっかりと摺り合わせるため、それ以降のトレーニングの質的価値が急激に高まります。

意識的にせよ、無意識にせよ、コーチへの「協力」をする対象者は、その場をうまく進行させるだけで、すべてのセッションが終わってしまいます。もしコーチが気づかなかったとしたら、対象者が希望する行動が定着することはないでしょう。終了後に変化の兆しが見えたとしても、継続せず元に戻ってしまいます。肯定的な態度に勘違いしてしまうケースは、非常に気がつきにくいため、潜在的に多く存在していると個人的には思っています。

変化を目指す当事者となってもらうために

実は、私にも「危なかった」と感じる経験がありました。その対象者は上司の推薦で受講した方で、本人も、業務上の課題解決策への挑戦にとても熱心な様子でした。ところが、全12回中7回目のセッションで、「コーチとのディスカッションがどうして必要なのか、やっと分かった」と言われました。

1つ前のセッションで、対象者は業務上の課題解決に上司や同僚の経験を利用することを決めて、その回までに自分の置かれている状況を周囲の人に共有することを約束していました。しかし、いざその状況になったところで、自分の課題は周囲の人に共有できる内容とできない内容があると気がついて、約束には手をつけずに7回目のセッションにやってきました。そして、上記の発言になったのです。

対象者にとって、これまでのセッションは、自分が変化するための「トレーニング」になっていませんでした。スタート時点で、自分の価値観に目を向けていれば、課題の中に他人と共有したくない内容があると気がついていたかもしれません。もしくは、安易な約束をする前に、それに気がつくこともできたでしょう。

初回面談時に、トレーニングには、コーチに協力する気持ちは不要であることを説明して、自分の目指す変化の当事者としての自覚を促すことが重要です。それでも、この例のような無自覚のままの進行を除外できるわけではありません。コーチは、常に、対象者の当事者意識を探りながらコーチングを進める必要があるのです。

渡辺 誠一

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