オンライン企業研修の課題を考える 第3回
受講者として見たオンライン研修
企業研修のオンライン化が進み、1年が経ちました。当社がこの1年間オンライン研修を実施した試行錯誤とノウハウを紹介するシリーズ「オンライン企業研修の課題を考える」の第3回は、「オンライン研修を実施して感じる課題」の受講者側の視点です。当社の講師自身が受講者として体験して感じたことや、講師として実施した研修で受講者から見えたことをまとめ、課題を探っていきます。ぜひ今後のみなさまの人材育成にお役立てください。
シリーズ「オンライン企業研修の課題を考える」
- オンライン研修を実施して感じる課題
- 講師・運営側から見た受講環境(第1回)
- 運営、その他(第2回)
- 受講者の物理的な側面と心理面(第3回)
- グループワークをするうえで注意する点
- 今後に向けての注意点、または期待すること
1. オンライン研修を実施して感じる課題
(「受講者側」として)
物理的な側面
当社講師陣から寄せられた情報
- 集合研修より疲労度が高い。1日中座ったまま画面を見ているのは疲れる。
- PDF教材は使いにくい。
- 通信環境や機器にセミナー体験の良し悪しが左右される。回線の速度、画面サイズなど。
- 会社などで受講する場合に、場所を確保するのが大変。
集中して画面を見続けるのは、想像以上にストレスがかかります。研修中に、受講者が目元や肩を触る仕草もよく見られます。第2回の講師・運営側としての情報にもありましたが、オンライン研修の休憩は回数を多く、また長めに取るべきでしょう。
通信環境や使用する機器には個人差があります。機器や通信にトラブルが起きる前提で、トラブルが発生しても焦る必要がないこと、接続が途切れた際に研修に参加し直す方法や、講師や事務局への連絡方法などを研修開始時に伝えることで、受講者は安心して研修に参加できます。
心理面
当社講師陣から寄せられた情報
- 受講者が多いセミナーでは特に、自分が見てもらっている、大切にされているといった感覚を得るのが難しい。
- 自分の参加の仕方や行動、研修中に考えていることなどが合っているのか確認ができない、また間違っているのではと不安になる。集合型であれば、他の受講者の表情や頷く仕草などである程度は判断できる。
- 他の受講者を確認できないので、距離や疎外感がある。
- 管理職研修で部下についての話題や悩みを話すといった場合に、集合型より「深い話」への遠慮が大きい。
- 通信状況や機器の状況など、理由や言い訳が存在するため、参加意欲を自分で高めないといけない。簡単にサボることができる。
- 聞きたいことや確認したいことがあっても、教室のように隣の人にちょっと聞くということができない。結局そのままにしてしまうので、理解や納得感の不足が起こる。
- あまり話したくないテーマのブレイクアウトセッションは気が重い。その場合の司会進行役はつらい…という後ろ向きマインドがある。
画面上では並んで見えますが、物理的な距離は、心理的な距離感も生んでいるようです。講師としては、最初のアイスブレイクを丁寧に行う、ブレイクアウトセッションでは各グループをまわって、距離感を縮めるファシリテーションをまめに行うといった対応が求められます。また、受講者間のチャット使用を認めることも、心理的な距離感を縮めることにつながるでしょう。
「サボり」については、仮に寝転びながら参加したとしても、よしとするくらいのパラダイムシフトが求められているのかもしれません。研修の目的次第ですが、姿勢を正しての参加は、研修の最重要課題ではありません。環境の大きな変化を受けて、あらためて目的や集中すべきことを見直し、明確にする必要があります。この点は、テレワーク(在宅勤務、リモートワーク)の推進などにも共通することではないでしょうか。
次回は「グループワークをするうえで注意する点」について「講師・運営側」の視点からお伝えします。