面談における振り返りの重要性と効果的なやり方
「振り返り」は重要な部下の成長機会
4月が年度初めの企業では、10月より下期がスタートしました。下期スタートの前後に、改めて面談を実施するかと思います。
一般的に、面談は以下のように進めます。
- 年度初めに上司と部下の間で合意した目標の「進捗確認」
- (進捗確認を受けて)上期活動の「振り返り」
- (振り返りをもとに)下期行動の「改善」計画
これに加えて、部下のキャリアビジョンなど、長期的な方向性での話をすることができれば理想的です。
ところが、限られた期限で部下と面談をする必要性から、ひとつの面談に十分な時間が取れないまま、ⅰ.の「進捗確認」とⅲ.の「改善」計画だけで面談を終了してしまう傾向があるようです。
ⅱ.の「振り返り」は、重要な部下の成長機会です。それができない理由を企業の人事担当者の方に詳しくうかがうと、時間不足以外に2つ大きな理由があることが分かってきました。
「振り返り」できない理由
理由 1. 重要性を分かっていない
まず1つは、振り返りの効果や重要性を、面談をする上司が分かっていないという理由です。理解していないために、面談で振り返りのための時間を取らないというわけです。
振り返りには、多くの学びと気づきを引き出す効果があります。そして、教訓は部下の成長を促します。コルブ(David A Kolb)が提示した経験学習モデルでも、振り返りは重要なステップの1つになっています。
面談で「上期の活動を振り返る」とは、実際の体験や経験と自身の能力(知識、スキル)とのギャップを認識し、欠けている能力を身につける方策を考えると同時に、下期に向けての改善計画をより具体的にまとめることです。
例えば営業職であれば、受注できた案件、また失注した案件を振り返ることで、「なぜ?」を理解し、目標達成に向けた下期の活動計画を良質なものにします。
理由 2. やり方を知らない
理由のもう1つは、面談をする上司が、効果的な振り返りの方法を知らないことです。しかし、学校や企業の教育で、振り返りの方法を体系的に学ぶ機会がない(なかった)とすれば、悩むのも当然かもしれません。
効果的な「振り返り」の方法
振り返りの方法については、前出のコルブによる経験学習モデルや、コルトハーヘン(Fred Korthagen)によるALACTモデルなどを拠り所にすることができます。ラーニング・マスターズでは、これらの知見のなかから、特に以下の3点が重要だと考えます。
ポイント 1. 焦点を見つける
時系列に沿うなど漠然と振り返りをするのではなく、期間の中で「転換点」「好調や、逆に不調からの脱却」といった節目に焦点を絞ることで、教訓や本質に近づける可能性があります。
ポイント 2. 出来事を丁寧に思い出す
節目の焦点を見つけたら、その時に起きたこと、本人が行ったことや言ったことなどを、ある程度時間をかけて、しっかり思い出してもらいます。その中から、成長につながる手がかりを見つけることができます。
ポイント 3. 他者の視点を入れる
振り返りをして今後の改善計画を考えていくときに、他者の目が入ることで、より選択肢の幅が広がる可能性があります。面談の内容次第ですが、部下2人を一緒にして面談を行うといった方法も考えられます。新たな解決策を考える場面など、他者の視点をシェアすることは非常に有効です。
この3点をおさえることで、振り返りの質は格段に向上します。さらに具体的な方法など、気になることがございましたらお気軽にお問い合わせください。
<参考>
- 教師教育学(F・コルトハーヘン著、学文社)