家庭用ゲームを企業教育や研修の視点で振り返る
皆さんは家庭用ゲーム機で遊んだ経験はありますか? 私の場合、小学校入学のタイミングで任天堂の「ファミコン」がわが家にやってきました。それを皮切りに「スーパーファミコン」「プレイステーション」と、ゲーム機の進化と共に成長してきた世代と言えると思います。
最近はゲームで遊ぶことも少なくなりましたが、子どものころは、ずいぶんと熱中していました。親から家庭内ルールで規制されなければ、時間の許すかぎり没頭していたのではないかと思います。そんなゲームについて、教育や研修の視点で振り返ると、人材育成や人材開発とのつながり、共通性のようなものが見えてきます。ここではその一例を挙げておきたいと思います。
経験から学ぶ力の3要素
ゲームでは一般にゴール、目的、目標などの設定があり、それを達成して次のステージや次の展開へ進むことをくり返していきます。このゲームの流れには、松尾睦先生が著書「『経験学習』入門」(※)の中で提示している「経験から学ぶ力の3要素」が、サイクルとしてうまく機能しているようにみえます。
1. ストレッチ(挑戦する力)
成長には、難しすぎても簡単すぎても効果は期待できず、ちょうどよい目標設定が求められます。そうやって過去を振り返ると、適度な難易度のゲームに熱中していたように思います。
出だしから極端に難しすぎるゲームは、わけが分からない「クソゲー」というレッテルを貼られて、そっぽをむかれていました。私たちはもう大人なので、仕事に対してはそっぽをむかずに取り組みますが、気持ちとしては、子どもの時とそう変わらないものを抱いているかもしれません。
2. リフレクション(振り返る力)
やったことをしっかり振り返ることが、経験を成長につなげます。同じゲームもくり返していくと、だんだんとうまくなってきて、コツがつかめてきます。なぜそのゲームをクリアできたのか? 学校で話題になったときに、ゲームをクリアできた子は一生懸命にそのことを言葉で説明して、伝えようとしていました。
振り返りというと、よく「反省」に近いイメージを持たれてしまうことがあります。子どもが遊びを振り返るように、楽しく行うことも大事な要素ではないでしょうか。
3. エンジョイメント(楽しむ力)
できるかできないかといったものに挑戦をしていくのは、楽しいものです。あまりにそのゲームが難しくて、クリアできないとあきらめてしまうのですが、そこで友達と一緒だったりすると、いつまでも楽しんで挑戦していたように思います。大人になってからも周囲のサポートは、仕事でも大事な要素です。
人材育成で言われる原理原則は、決して人材育成の中だけのものではなく、人間の活動のいろいろな部分に見え隠れしているように思います。理論と言われると難しそうな印象ですが、こういった見方をすると「お勉強」よりも、ぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。
参考:「経験学習」入門,ダイヤモンド社(松尾睦 2020)